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女を、地下室の壁に、塗り込めた。
髪の長い女だった。くせのない、まっすぐな髪の。
首を絞めると、驚いたように、瞳いっぱいに、私の顔を映した。
艶のある瞳の表面に涙がたまり、膨張していく。
とうとう溢れ、すうーっと零れ落ちた。その頃にはもう、瞳の輝きは失せ、虚ろになっていた。
だが、髪のいろは、あせることはなかった。体を横たえると、髪は、より一層の深みを増し、しっとりと重く、褥の上を流れた。
焚き染められた、伽羅の香りが息苦しい。
汗ばんだ首筋に、生き物のように渦巻く一筋の髪の毛を払うと、白い首筋が現れた。
そこには、むごたらしい赤紫の花が、散っていた。
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