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つい先ほどまで怒りを露わにしていたノエルは、突然ひっぱたかれたことにより目を丸くしつつ、叩かれた頬に手を添え、アディを見る。
「…っ、どうして、止めたか、ですって…?」
ぷるぷると震える手をぎゅっと握りしめた後、涙を溜た目でノエルをにらみつけ、今度はアディが大声で叫ぶ。
「理事長が大馬鹿だからですよ!!!」
「おおば、か…」
予想もしなかった言葉に呆然としつつ、珍しく自分の目の前で泣く彼女の目をしっかり見ていた。
「あのまま殺してしまっては、ただ後悔が残るだけです!ただの人殺しになってしまうだけです!
理事長は、あのまま…お父様がどうして亡くなったのか知らないままあのリーダーを殺しかねなかったからです。
向こうには向こうの事情があるはずでしょう、それをお忘れですか!」
その言葉にノエルはハッ、とした表情になり、視線をアディから離す。
俯きながら少しした後、ふっ、と笑い声をもらす。
「……そう、だね…ははは!まさか自分よりずーっと下の子に諭されるなんてね…俺、完全に頭に血が上っていたなぁ」
自虐っぽく大きく笑い出すノエルに「笑い事じゃないですよ!」といつもノエルに対して怒る声で答えた。
「理事長より私の方がよっぽどしっかりしてますよ。理事長はばかでどうしょうもないです!」
「ははは、ひどいなぁ」
ぷりぷり怒るアディに、笑うノエルと、いつもの光景に、少しノエルもアディも心落ち着いたのだろう。
ノエルがひとしきり笑った後、ふぅっ、と息をつく。
「奴らはこの先に行ったね?追いかけて、真実を今度こそ突き止めようじゃないか」
「お供させていただきます」
凛と笑うアディに、柔らかく笑む。
「心強いや」
ふふ、と笑いあった二人はかつんと小気味いい音を鳴らしながら自分たちが来た方向とは向き、暗闇へと突き進んでいく。
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