― 確執フィナーレ ―

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◇◇◇ スラム地下街をひたすらに走り進む影が二つ。 時折がれきの影に隠れ、前や後ろを確認しつつ、ノエルとアディは戦地を駆け巡っていた。 太陽の光も差し込まない、暗闇と埃と悪臭が漂うスラムの地。 学園がある地上とは別世界に紛れ込んでしまった感覚に囚われる。 二人は先ほどまで戦闘を行っていたアオフシュタントのリーダーであるウルフィーと幹部クラスの暁の行方を追ってここまでたどり着いた。 そして、ここには流星の王もいる。…油断せず、進みすぎないよう用心を怠らない。 進んでいくと、二人の視界にスラムにしては珍しい大型の建物が飛び込んでくる。 周りのトタンや朽ち果てたコンクリートと違い、特別な金属で囲われた建物がある。 しかし、周りの建物同様、いやそれ以上に中は荒れ果て、その辺りに物が散らかっている。 引き寄せられるように二人は歩を進め、建物内に入る。 「ここは、実験室跡地か何かかな…?」 床に散らばる実験道具やデータの資料。暗くて見えないがまだ奥にも様々な器具があるのだろう。 「今情報共有した内容ですと、ここが、アオフシュタントのリーダーの能力形成の地だそうです」 アディがノエルに情報を伝えると、「ここが…」と返事をしつつ辺りを見渡す。 「随分と、派手にやったんだね…」 ウルフィーがこの研究所から逃げ出した際に大きな暴動を起こしたことを共有した情報で知っていた為、この荒れようも納得してしまった。 この研究所の職員、そして、ここで自分の父親が死んだのだろう、と思うとノエルの表情がすっと暗くなる。 歩みを進めていると、こつん、と何か固い物が当たる感触がし、足下を見てみると、黒い表紙の古ぼけた手帳のようなものが落ちていた。 「手帳…?」 拾い上げてみると、埃も付いていており、かなり放置されていたことが見て取れる。 そして手帳にべったりとこびりついている血も黒く変色してしまっている。 何気なくぺらぺらと頁をめくる。最初は研究者らしい、実験への意気込みや改良の案など前向きな事が書かれていた。 しかし、頁を進めていくごとに字も歪み、書かれている内容も、失敗続きの実験に対する苛立ちが目立ってくる。 そして、手帳の最後の頁までいくと、今まで流すように読んでいた手が止まる。 手帳にはこう書かれていた。
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