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【2×××年 ×月×日】
―― 学園の理事長が阻止してくる。
酷く目障りだ。きれい事でこの戦争を終わらせられるはずがないのは知っているはずだろうに。
必要最低限の犠牲は致し方ないことを、示し合わせるしかない
そして今日は我らの成果を見せつける時だ。
平和主義の偽善者に、あの理事長に、見せつけてやるべきである。
これが、世界であるということを ――
そう、最後の頁に書かれていた。ノエルは何も言わず、ただひたすら静かに手帳を読んでいた。
そしてこの日付は、ノエルの父親である先代理事長の命日でもあることをノエルは知っている。
…忘れたくても忘れられない記憶が脳裏に浮かぶ。
強く目を瞑り、脳裏に浮かんだ記憶に感情を飲まれないよう押し黙る。そしてそれはどこか何かを思案するようでもあった。
(―これで、ピースは揃った。あとは、役者だけ…)
考えが纏まったのか、薄く目を開きながら、開きっぱなしであった手帳をぱたん、と閉じる。
そうして、言葉を選ぶようにして口を開いた。
「……昔を懐かしみに来たのかい?」
落ち着き払った声が建物内に響く。
返事はない。だが、ノエルはその問いを投げかけた相手を確認するように視線だけを動かす。
―そこには、ウルフィーがノエルに向かってナイフを突きつけながら立っていた。
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