5人が本棚に入れています
本棚に追加
「てめぇこそ、何故ここに居る…?」
ウルフィーはかなり気が立っているのだろうか、ナイフを突きつけながら荒い口調で問いただす。
「君たちを追って、たまたま辿りついただけさ」
ウルフィーの様子とは対照的にあくまで静かな口調で対応する。
――ここで、感情的になってはいけない。相手の本性を探る為に自身は冷静を保たねばならない。
「それで、これを読んでいただけ、知ってて聞いてるだろう?」
これ、と言いながら手帳を背後に立っているウルフィーに見せつつ彼の表情を伺う。
手帳を見せつけた瞬間、少しだけ眉が動き、ますます表情の険しさが増した。
「……もう小細工な無しだ。ノエル。アンタの大事な秘書サンが今度能力使ってみろ、こっちの右腕があの細っこい首へし折ってやる」
と、ウルフィーが後ろに居るアディと暁を見せつけるかのように視線を仰ぐ。
暁が後ろからアディの首に腕を回し、抵抗する腕も掴んでいる。アディは暁を睨みつつ抵抗するが、体格差もあり、意味を成していない。
だが、その様子を見ても焦る様子は無い。
「うちの秘書を脅したって意味無いよ。彼女は俺より強い」
「アディ、何もしないでいてくれ。必ず、俺が助けるから」と柔らかく笑むと、アディは凜とした口調で「さっさと終わらせなさい、他の仕事もあるんですからね」と返事。
変わらぬ彼女の様子を見て満足したように笑った後、ウルフィーへと向き直る。
「それに君の獲物は、俺だけだろう?俺だけを狙ってこい」
チッ、と忌々しそうに舌打ちをし、再びウルフィーはノエルをみとめると強い口調で告げる。
「てめぇとは、ここですべて終わらせる」
「いやぁ、奇遇だね」
つま先の方向を回転させ、真っ直ぐにウルフィーを見据える。その目には強い決意の色が映っていた。
「俺もそう思っていたよ」
最初のコメントを投稿しよう!