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◇
カツン、カツンと薄暗い階段を降りていく。
灯りなどは整備されておらず頼りとなるのはノエルの槍の先についているランプのみ。
変わらずゆらゆらと淡い青の光は、足下とその数歩先を照らしている。
「まさか、あの石柱が扉で、地下に続く階段があるなんて…」
ノエルの後ろにいるアディがぽつりと呟く。呟きにもかかわらず、石造りの為か声の反響が上まで響いていく
「アディのアイディアが光ったね。俺、アディの一言が無かったら見逃していたから」
「本当に思いつきだったんですよ…」
政府直轄の書庫に来ていた。
大量の本棚がある広い図書館の様な空間の中心に、その場には似つかわしくない巨大な石柱があるのを、ノエルは疑問に思っていた。
まさか、自身の持つペンダントをくぼみにはめ込む事によって石柱が動き出し、こうして地下へと繋がる階段を降りていく事になるとは思いもしなかった。
「ところで理事長…そのペンダントは貰い物なのでしょうか?随分と年季が入っていたのですが」
「ああ、父から譲り受けてね。父も同じのを持っていた」
「いた、というのは?」
「ペアペンダントでね。中には俺の小さいときと父と母の写真が入っているんだ」
パチンとペンダントを開くと、セピア色に加工された笑顔のノエル一家の写真が入っていた。ノエルの言った通り、ノエルは今よりずっと背が小さく、その隣には先代理事長の在りし日の姿がそこにあった。
「…父が亡くなった日、死体で見つかった日にね、ペンダントだけ、見当たらなかったみたいでね。盗まれて売られたのかもしれない」
その声はいつもの明るさは含んでおらず、父を懐かしむ気持ちか、それとも今は亡き父を悲しむ気持ちか、暗い様に聞こえた。
「…申し訳ありません、変なことを聞いてしまいましたね」
「そんなことはないよ。黙ってるつもりはなかったし
…先へ進もうか」
その後は話すことなくひたすら暗闇に続く階段を降りていった。
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