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真っ直ぐに互いが互いをみとめあう。
先に視線を外したのはウルフィーの方で、その顔は苛立ちとも辛さともとれるような表情を作っていた。
「……ほらな、やっぱり親父にそっくりだ」
そう静かに呟くと同時に、どろりとウルフィーが持っていたナイフが溶け出す。
そのまま黒い粘着質のある影はウルフィーの影と混ざりあい、大きな黒い手が伸び始める。
影は膨張し続け、建物の天井にまで届くのではないかという程まで伸びる。その異形の姿にノエルは少なからず恐怖感と、これらがいつ自分に向かってくるのかと構える。
しかし、その手がノエルを攻撃してくることは無く、そのままウルフィーへと纏わり付く。
「…何を、している…?」
黒い影を身に纏わせ続けるウルフィーに対して警戒しつつも、問いを投げかける。
「何、って?」
ノエルの質問に、ふ、と口角を上げる。
「アンタを本気で潰すにはな、俺も本気出さねえといけねえって思っただけだ」
そのまま影はずるり、ずるり、と何か生物が這いずるかのような音を立てながらウルフィーの手足へと憑依していく。
そしてノエルとアディは気づく事となる。
白い髪が影の色と同じ黒へと変わり、ギラギラと光る青い瞳が鮮血のような赤へと変わっていた。
「さぁ、アンタも構えろよ」
挑発的に指を動かし、ノエルを誘発する。
それに静かに応じるように、槍を構え、少し距離を取れるように後ろへ歩を動かす。
もう、ここで武器を構えてしまったら、どちらかが倒れるまで戦い続けなければならなくなる。そんな気すらしながら。
「ラストダンスといこうじゃねえか、ノエル」
「望むところだ。ウルフィー」
互いの言葉が終わったと同時に二人は地を蹴り上げた。
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