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間一髪で避けることが出来るが、右頬に一筋の切り傷ができあがり、右目を隠していた髪が切れる。
「っ!」
向こうから攻撃されたなんとか距離を取ることができた。
頬から流れる血を拭いつつ、今度は両目でウルフィーを見据える。
ウルフィーの方はというと、いつもであれば立て続けに攻撃してくるはずであるが、拳を握りしめ、どこか俯きながら小声で何かを呟き続けている。
「…生きたかった、だと…?」
ようやく聞き取れた一言を契機に、ウルフィーは顔を上げ、叫ぶ。
「ふざけんじゃねえ、アンタの父親が!俺を"生かしたんだ"!!」
赤い瞳は見開き、そしてぼろぼろと涙が流れている。
ノエル、アディは勿論であるが、普段から行動を共にしている暁はとりわけ、これまで見せることの無かったウルフィーの表情に驚き、ただただ彼の言葉を黙って聞いているだけであった。
「あの時、俺は暁を生かそうとして前の代の流星の王と契約をした!だが、それでも小せえ俺の身体でも流星の王の能力は荷が重すぎて一度狂気に陥ったんだ!
そこで、本当なら二人して死ねたんだ
だがな!!
てめえの父親が、先代の理事長が、"俺に殺される"ことで、俺を正気戻しやがったんだ!」
「なんすか…それ…」
ぽつりと暁が呟く。このことから暁は経験していない過去であるということが推定出来る。
暁の声にウルフィーはどこか哀れむような表情を作り、もう一度ノエルに向き直る。
「この際だから教えてやるよ。俺とアンタの父親の話をよ」
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