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◇
再び視界が戻った時に俺が見たものは、真っ赤な血と目の前で崩れ落ちる見知らぬ男だった。
その男の返り血を全身から浴び、鉄のにおいが鼻についた。
そして、自分の手を見ると異形の形をしており、自分の物とは思えないほど大きく、爪も尖り、血が滴っていた。
ここでようやく俺は、この男を俺が殺してしまったということに気づく。
そしてぽつり、ぽつりと正気を失う前の記憶が蘇ってくる。
自分は、暁を救おうとして流星の王と契約をした。
契約に習って自分にも流星の血を入れたがそこから記憶が無い。
だが、断片的に思い出せるのは、目の前で倒れている男が何か叫びながら自分の前で武器も構えずに飛び出してきたということだけ。
「ッ…だい、じょうぶ…かい?坊や…」
その男が息絶え絶えながらも俺に声を掛ける。
自分が大丈夫じゃないはずなのに何故、自分に対して大丈夫かと問いかけられるのだろうかと疑問に思いつつ彼を抱き起こし、泣き叫ぶ。
「なん、で…俺は、一体、何をしたっていうんだ…!おい!オッサン!答えろ!!」
混乱のまま質問をぶつける俺に対し、その男は死にかけていながらも笑みを絶やさず、優しい声で答えた。
「僕はこう見えて星座持ちでねぇ。君が助かる為には、こうするしかなかったんだよね…
さっきのできっと君の中に取り込まれた流星の能力が少しは和らいだと思うよ…」
その時の俺には何のことか全く分からなかったが、ただ、その見ず知らずの男が俺を生かそうとして自ら犠牲になったということだけは分かった。
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