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「なんで…」
その事実を知ったとき、俺の声は少なからずうわずっていた。
「なんで!!見ず知らずの子供のために死ねるんだよ!!」
分からなかった。
身内でも無い、知りもしない赤の他人を、どうしてこの男は助けようと思ったのか。
そしてどうして実践してしまったのか。
その心理は今の俺でも理解しがたい。
「なんで…?そうだなぁ」
その男は、ただ笑いながら、涙がぼろぼろ落ちる俺の頬を撫でるようにして酷く優しく答えた。
「君が僕の息子と似た年ぐらいだった、ということもあるしね、君には"生きてほしい"んだ」
それが、その男、アンタの父親である、アルバート・オックスフォードの最後の言葉だった。
その男は何かを託すかの用にその最期にペンダントを俺に渡した。
そこには当時の俺と同い年くらいのアンタの姿があった。
そして、アンタの父親の血を直接浴びた俺の首筋には1本の青い筋が通っていた。
…詳しくは知らねえが、これのせいで、俺は流星の力を制御しつつ生きながらえることができるみてえだ。
…これは、ただの呪いだ。見る度にそう思っている。
◇
「……そうやって、笑いながら死にやがったんだよ。アンタの父親は」
ひとしきり話し終え、ウルフィーが何も言わなくなると、その場は静寂に包まれる。
誰もがなんと言えばいいのか、先ほどの話の内容を急ピッチで理解しようとし、言葉を選んでしまう。
誰も話さない中で、静けさを消したのはウルフィーだった。
「分からねえ。この世界に絶望しか見いだせなかった俺に"生きろ"なんて酷すぎるんだよ!」
最後、声を荒げ、それと同時にギリッと拳を握り、服の皺がさらに濃く刻まれる。
「なあ、アンタは分かるのかよ…ノエル
なんで、お前の父親は俺に"死ぬな"じゃなく、"生きろ"って言ったのか」
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