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ヒュッ、と風を切る音が背後で聞こえたかと思うと、大きな影ができあがる。
ウルフィーが気づいた時にはノエルが背後に回って、槍の長い柄をしならせ、円を描くようにして振りかぶっていた。
その円を描き、刃の先に居るのは誰か言うまでもないだろう。
その場に居たものすべてが、次に起こる展開を予想して直接見ないように目を瞑る者、これで最期か、と覚悟を決める者も居た。
しかし、次に聞こえた音は肉を断つ音でも、血が飛び散る音でも無い。
ぱきん、というなにか金属質の物を割ったような音が響く。
「……勝負あったね、ウルフィー」
ノエルはウルフィーの首飾りを真っ二つに割ることはしたが、ウルフィーに傷つける事はしなかった。
しかし、ウルフィーが能力の限界が来ているのは一目瞭然の上、組み敷かれている体制的にも足掻くことは出来ない。
決着は、ついたのだ。
「さっきの答えだけど、俺なりの考え方だけど教えてあげるよ」
負けたことにいささかながら悔しさの表情を滲ませていたウルフィーがノエルの言葉にハッとしたように顔を上げる。
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