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◇
「ウルフィー、自分まだ頭の整理がついてないんすけど」
「うるせぇな、なんだよ」
コツン、コツンと金属製の廊下をただひたすら歩く。薄暗いが廊下の両脇にはぼんやりとした電灯がともされている。
その中を、ウルフィーと二歩ほど後ろに暁が従うように歩みを進めている。
「さっきの扉を開いたアレはなんすか?それと、ここは一体どこっすか。自分らアオフのアジトから来ましたよね?」
未だに目の前に居るウルフィーのやることに理解が出来ていない上に、諜報部隊の性であろうか、質問を連ねていく。
「二つ目の質問から答えてやろう、暁。
ここは政府お抱えの書庫に繋がる地下路だ。わざわざスラムの地下に繋げて、パパラッチに汚職報道されねえように作ったんだとよ」
「へえ、お偉いさんも随分大変なことをなさるもので?」
「当たり前だろ。常識的に考えて中央政府の官僚なんて一生遊んで生きていけるカネを受け取れるわけだ。…死んででも自分の地位は守りてぇだろ?
その地位守りてぇ野郎共が、人体実験の内容や結果報告その他諸々バレたらヤバいやつを隠すための地下書庫がこの先。隠した後に逃げる道がここというのが答えだ」
そう話しながら、ウルフィーはチャリッと首に掛けていたペンダントを取り外し、弄び始める。
「そして最初の答えだ。
…この後分かる」
あまりにもウルフィーらしくない解答に少し驚いた様子だったが、ははは、と笑いが廊下に響く。
「答えになってないんすけど?」
「それでいい。俺の口から言うつもりはねえよ」
どうしてもウルフィーは口にしないつもりだろう。その意を汲んで、それ以上は暁も言及しなかった。
ウルフィーは暁がもう何も質問してこないことを確認し、ペンダントを首に掛け直して服の中へと入れた。
一瞬、光を得たペンダントはきらりとエメラルドグリーンの光源を発した。
「奴が賢ければ必ずここにやって来る。
…ここでケリを着けてやる。ノエル・冬星・オックスフォード」
カツン、と小気味のよいヒールの音が鳴り響く。
廊下を抜けると大きく開け、回りは天井まで届きそうな本棚で囲まれた地下ホールが眼前に広がっていた。
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