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その音を合図に、ピタリと攻撃をする手が両者ともに止まる。
一時の沈黙が二人の間に流れたが、その沈黙を破ったのはノエルの驚きの色を含んだ呟きだった。
「これ、は…」
ノエルには"それ"に見覚えがある。
エメラルド色に光り、年季の入った金属製のロケット型のペンダント。
決定的証拠は落ちた際にロケットが開き、中の写真が二人の目に映る。
仲よさげに笑い合う家族三人の写真。
―…ノエルが身につけているそれと、全く同じ物がウルフィーの胸元から落ちたのである。
「どうして、」
ペンダントに気を取られていたウルフィーに組み付き、床へと押し倒し、馬乗りの状態になる。
思い切り床に後頭部を打ち付け、自分より体格のいいノエルに身体の自由を奪われたウルフィーが忌々しげに睨み付けてくるのを気にする様子もなく、半ば怒りのような大声で畳みかける。
「どうしてお前が!!父さんのペンダントを持っている!!!」
頭に血が上ったらしく、いつもの穏やかな表情が一変、目は見開き、息づかいも荒い。
どこか、獣じみた表情をしたノエルがそこに居た。
それに相反し、冷静で、しかしどこかノエルを嘲け笑うかのような含みを持った声でウルフィーは答える。
「どうして…?ッハハハ!それは、てめえも薄々勘づいてたんじゃねえか?それをわざと見なかったことにしてた!そうだろ?弱虫の理事長サンよお!?」
ひとしきり笑い終わったあと、挑発するように、ノエルの胸に掛かったペンダントを掴み、ひどく低く、そして楽しそうに告げる。
「…お前の父親殺しの犯人が、目の前に居るってことをよ」
その言葉が終わると同時に、薄紫色のノエルの目がみるみるうちに赤紫色へと変わり、
ぐしゃっ、と鈍い音が返事の代わりだった。
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