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げほっ、と口から血を吐いたのはウルフィーで、頬が赤黒く内出血を起こしている。
対するノエルは、拳を握りしめたまま何かぽつり、ぽつりと口にしている。
「……お前、が…」
やっと聞き取れた言葉と共に、ぶるぶると血が滲んだ拳が震える。
もう片方の手で胸ぐらを掴み直し、ウルフィーめがけ、もう一度振りかぶる。
「お前が!!!!」
もう一度拳がウルフィーに入る―…と、思った瞬間、
ギリッ、と強い力で腕を締め上げられる。
「…ウルフィーこれ以上は黙って見ておけないっすよ、っふ!」
ノエルは腕を掴まれ、暁に背負い投げられる。腰から落ち、ズキリと重い痛みが走るが、そんなことを気に留める暇なんて無かった。
そのまま床を叩きつけ、その反動を生かし、暁の足下を払うよう蹴りを入れる。
「ッ!?」
とっさに足下を狙われ、バランスを崩しかけるが、なんとか踏みとどまれたようだ。そのままウルフィーのそばに寄り、立ち上がらせる。
ウルフィーも口元の血を拭いつつ、ノエルを見据え、
「とんでもねぇ化け物覚醒させたみてぇだな…?」
と、半ば恨み言のように口の中の血と共に吐き捨てる。
それに対し、その言葉すら届いていたのだろうか怪しいほど、ノエルの全身から"怒り"の気が立ちこめていた。
「お前ら、が父さんを殺したのか…?」
そう呟くと、二人の間合いに走り込む。
ランタンは赤く光り、持ち主の怒りを表しているようだった。
鋭く変形した槍の刃がウルフィー目がけ、斬りかかる。
殺気を瞬時に察したウルフィーはなんとか腕を鎧化させ、受け流すことができる、が、あまりの衝撃によろめき、隙を生み、立て続けに攻撃される。
その攻撃の合間に暁がウルフィーの助太刀をする形だが、押され気味といった感じだ。
獣のような殴り合い、蹴り合い、肌が刃物で切り裂かれる音が目まぐるしく響く。
いつもの爽やかさなど無く、そこに居たのは怒りに身を任せ、獣のように変貌してしまったノエルを、見ていられるはずもない人物が、物陰から飛び出す。
「っ、理事長!!」
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