会社にて

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「指原、今日は飲みに行かないか?」  櫻井が差し向けてくる。ふむ、転属の話が出たしたまにはいいか。 「あぁ、いいけどほどほどにしとけよ」  そう言って会社を出て行く。 「えっ、指原さんお酒飲めないんじゃないんですか? 何で櫻井さんと飲みに行くのに私とは行かないんですか?」  ……面倒な奴に絡まれた。  ――――こいつは菅原。俺達と同期で入ってきためんどくさいやつ。何かと俺に絡んで来るのだが如何せん態度が気に入らない。だからこいつの前では酒を飲めないことにしているのだが……まぁバレるのも時間の問題、転属とあればまぁ別れることは確実だろう。別に本当のことを言ってもいいか。 「酒は嫌いなんだ。知らん奴と飲むのなら尚更な。だから諦めろ」  そう言って会社を出て行く。酒が嫌いなのは本当だから飲み会は基本的にやらない。出ない。だが例外もしっかり存在する。  ――――櫻井。俺の数少ない友達。中学校からの腐れ縁で今も同じ会社で働いている。いや、もう働いていた、の方が正しいのか。 「なーっとく出来ません! 何で櫻井さんなんかと!」  そんな叫び声が聞こえたが我関せずと言わんばかりに退社する。きゃんきゃんと煩いやつだ。 「いいのか?」  そう一言だけ聞かれる。いいも何も、俺はあいつが嫌いなのだ。 「行くぞ。面倒なだけだ」  それだけ言っていつもの店へと足を運ぶ。
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