第1章 キムンの傭兵

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2016年 1月1日、マルヤマ山聖堂大祭壇で、ユクコロカムイの例大祭の席にミラルとわたしは参席していた。 イナウの並ぶ聖堂の中、ミラルは神の啓示を聞いたらしい。それは、邪神として畏れられるオキキリムイからのものだった。 『鹿の王国は腐敗し、民は貧窮している。アイヌを救うべく、古き動物神の力を借りてこの世にカイの恵みを蘇らせるのだ。』 一瞬にして祭りは滅茶苦茶になった。聖堂に邪神が紛れ込んでいることで、神官が騒ぎ出した。これは元日の事件として報道され直ちに国中の騒ぎとなった。勿論それで終わればよかったのだけれど。 聖堂に来ていた学内の友達には、ミラルを除いてオキクルミの啓示を聞いたものはいなかった。誰が聞いたって世迷いごとだと思うが、わたしは彼の言葉を信じるの。わたしのカムイもそれと似たような予言をしていたから。
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