脇役A君

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俺の名前は飯田栄(いいだえい)。 取り立てて家柄もよくないし、成績も運動神経も人並みな俺は、初等部の頃から東雲学園に通う、極々平凡なE組の生徒だ。 この学園における上位人気の生徒というのは、主にS組の生徒に集中している。 家柄がよく成績優秀。なにより顔が良い。そんな、生徒会や風紀委員、役職持ちと呼ばれる華やかな生徒たちの背景にしかならない、平々凡々なモブが俺。 俺を栄君と名前で呼んでいただくなんておこがましい。脇役Aとでも呼んでいただこう。 しかし、そんなモブな俺にだって好きな人は出来る。 俺と同じ、2年E組に在籍している中等部からの編入生の相川慧(あいかわけい)。 たった今、俺の乱心を止めてくれたクラスメイトに、俺はずっと片想いしている。 「栄ちゃん、大丈夫?疲れてるんなら誰かと交代してもらう?」 「…いや、大丈夫。心配かけてごめんな?慧」 特殊メイク研究同好会に所属してるクラスメイトに施された、ゾンビメイクの顔を心配そうにしかめた慧に、心臓が苦しいぐらいドキドキしている。 これはあまりにリアルなゾンビに対する恐怖ではない。けっして。
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