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「招待選手って?」
隣で絹塚との会話を聞いていた猫が口を開く。
「いや、まったくわからないけれど、また俺から出ちゃってたんだろ」
「出ちゃってたって何が? エッチなのが?」
それはダメだって……
グローリーセイバーに始まり、俺はそういうのはぼかすタイプだっていうのに。
「露骨な表現方法はやめるんだ。大体がそこは俺が『何かが』って言う流れだろうが。お前はたまにイレギュラーを飛び越えて、度を越しているからな」
「えへへ……」
「まったく……」
「それで、琥珀は出るの? あ、大会の方ね」
「それはいらない念押しだ。まあ、元々出ようかなと思っていたところだったし、絹塚さんには会ってみるよ」
「大丈夫?」
猫は眉を八の字にする。
「大丈夫って、何が?」
「だって、琥珀はいつもトラブルに巻き込まれるから。わたしは心配だよ」
「さすがに大丈夫だろ。まさか、ライフォールの責任者がオフィーリアのようにサイコパスだった。なんてことは、さすがにないだろうし」
「あ、サイコパスで思い出した。わたし通学パスで定期買わなきゃ」
通学パスというのは、Suicaの田舎学生版みたいなものらしい。
「すげー連想をしたな……」
「えへへ。じゃあわたしログアウトするから。また明日ね」
「おう。気をつけてな」
猫の姿が、タイムラグののちに消えていく。
ふう。
ギルドハウスに一人残された俺は、大きく息を吐く。
「待っていてくれ、か」
いつだか彼女に口にした無責任な言葉を、俺は天井に向けて呟いた。
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