招待選手

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ビリリと。 あたしの頭を電流が走る。 もちろん比喩じゃない。 頭の配線に電気が流れるのだ。 この感覚はなんなのだろうか。 あの日、脇を小川が流れる小さなお花畑で、大好きな彼に初めて膝枕をしてあげた。 懐かしい―― あの時からたまにそんなことを思ってしまう。 あの日、四つ葉のクローバーをみつけることはできたけれど、この現象に対する答えは頭にあるデータベースのどこを探してもみつけることができなかった。 「やあ、エルちゃん。もしかしたら待たせてしまったかな。だとしたら、僕は男を辞めたいくらいだよ」 あたしの管理者はゆったりと歩きながら、右手を上げてみせる。 だったら辞めてしまえ! とは言わない。 「本当にそう思っているのなら、小走りくらいしなさいよ。まったく。おはよう、チェリー。今日も早いね」 「おはよう。いや、無職っていうのも悪くないものだね。朝から晩までライフォール三昧だ。どうやら僕はニートとやらになってしまいそうだ。はっはっは」 あたしの管理者だという男は無職だった。 どういう経緯で無職の彼が、科学の結晶とも言えるハイスペックな人工知能の管理をしているっていうのよ? これも一つの謎で。 もう一つの大きな謎。 NPCでもなく、あたしは何のためにこの世界にいるのか。 自分の存在理由が、あたしにはわからなかった。 一度チェリーに聞いたことはあるのだけれど、煙に巻かれてしまったのだ。 「男を辞める前に仕事を探しなさいよ。それで、こんな朝早くから話って? あ、先にお茶淹れるね」 「ああ、よろしく頼むよ」 彼がギルドハウスのソファに腰を下ろすのを確認してから、あたしはキッチンへと足を運んだ。
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