招待選手

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「いやいや、久しぶりにごちそうになったね」 チェリーはあたしの淹れたアップルティーに口をつけると、そんなことを言った。 「んん? チェリーに淹れてあげたことってあったっけ?」 「ああ、いや。なかったかな? ひょっとしたらデジャヴってやつかもしれないね。はっはっは」 「デジャヴ?」 その言葉に、またビリリと電気が走った。 それを隠すように、あたしも大好きなそれに口をつける。 「ああ、そうそう。すっかり忘れていたよ。話だったね。今度開催されるPB大会を君は知っているかい?」 「うん。知ってるよ。あたしは出ないけれど、猫ちゃん達は出るみたいだから。チェリーも出場するの? あなたはそういうのには興味がないものだとばかりだと思っていたけれど」 その話は、ついこのあいだ開かれた定期パジャマ会で話題に上がった。 ユリちゃんの勧めで、猫ちゃんとすずりちゃんも出場してみることにしたらしい。 あたしも勧められたけれど、それは難しかった。 同じ魔法職でも攻撃魔法専門のすずりちゃんと違って、あたしが扱えるのは回復魔法と支援魔法がほとんどなのだ。 一応あたしにだって攻撃魔法は二つあるのだけれど、それでも並みいる強者を相手に一対一で戦えるわけがなかった。 ユリちゃんはあたしと同タイプのジョブなのだが、あの子は個人戦にはいつも剣士として出場するらしい(なんでよ?) 「実はね、僕はあの大会の招待選手とやらに選ばれたみたいなんだよ。だから、出場してみようかと思ってね」 「招待選手? 聞いたことないわね。何かメリットがあるの?」 「なんでもライフォール初の試みで、招待選手は二回戦までは免除ということらしいよ?」 「ふーん。よくわからない制度ね。それで、話ってそれ?」 「うん。話ってのは、お願いなんだ」 「お願いって?」 「僕はね、彼を、琥珀君を出場させたくないんだよ」 「んん?」 彼の言葉の意味を図りかねた。 「つまり、君に彼の出場を阻止してもらいたいんだ」 目の前の男は、意味ありげに笑った。
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