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「どうして?」
「いやね。どうもおかしいんだよ」
イラッ。
どうしてこの男は、こういつもいつも回りくどいのよ!
「おかしいって何が?」
「優勝賞品がね、いつものトロフィーとは別に、何でも一つ願いを叶えてくれるというものらしいんだ。それも招待選手に限ってね。そして、その招待選手というのが、僕の知る限りは僕を除いてカエサル君と、そして琥珀君なんだよ」
「おかしいって、あたしにはいいことのように思えるけれど」
願いを何でも一つだなんて、夢のような話だ。
あたしだったら、トレンディドラマのブルーレイBOXを選ぶかな?
んんー。
かわいい下着一年分。
パンケーキ食べ放題券。
いや、思いきって現実世界に身体をもらうとか?
違う。
琥珀君と結ばれたい。
あたしの願いはそれしかなかった。
あたしは機械のくせに、彼のことを好きになってしまったのだ。
感情を、持ってしまったのだ。
まあ、そんな願いを叶えることは、不可能だってわかってはいるけれど。
「都合が良すぎるとは思わないかい? 夢のような話が【たまたま】僕らの周りにだけ舞い込んでくるだなんて?」
「うーん。おいしい話には裏があるとは言うけれど。怪しいから琥珀君を止めてくれってこと?」
「まあ、有り体に言えばそういうことさ。最近君が妙な噂を持ってきただろう? 例のペインシステムの話だ。僕はこの運営チームが、何かよからぬことを考えているような気がしてならない。まあ、僕は石橋は思いっきり叩かないと気が済まない性格なんだ」
「そこまでくると、慎重というより人間不信ね……」
「何もなければそれでいいんだよ。でも、君とはいつだか約束しただろ?」
イライライライラ。
「約束って、いつどこで何をよ?」
「確か自販機のかげだったかな。あの日は寒かったねえ。はっはっは」
「はぁ? あなたは異世界から来たとでも言うの? ここは何番目の世界よ! まったく意味がわからないんだけれど!」
あたしの管理者は、そこで再びシニカルな笑みを浮かべる。
「今はわからなくていいさ。いずれわかる。あるいは君になら。そう言うべきなのかな?」
ニヤつく彼を前に、まだ朝だというのにあたしのイラつきは頂点を迎えた。
「死ねっ!」
ぶー。
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