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呼びとめられて、振り返るとそこには可愛い女の子がいた。
「ねぇ゛」
今日は彼女の喉の調子が良くないのか、「ねぇ」に濁点がついているように聞こえた。
僕は彼女を知っている。
昨日この高校に転校したばっかりの僕の隣のクラスの子だ。
見た目はこの高校で一番可愛いと噂の彼女。
対して僕は冴えないただの男子高校生。
彼女いない歴=年の数だよ、ちくしょう。
なぜ彼女が僕なんかに声をかけてきたのか理解不能だが、とりあえず返事をする。
「ど、ど、ど、どうしたの………かな? も、もしかして………その、道に迷った………とかかな? 」
駄目だ。
女の子と話すのなんて小学生ぶりぐらいだった………。
吃り過ぎてしまった。
きっとドン引きされてしまっただろう。
しかし彼女はそんな様子を見せなかった。
そして手で何かを伝えようとしていた。
何だよ、僕には話すことすらしたくないってことかよ。
今まで生きてきたなかで一番傷ついたよ………。
落ち込んでいる間にも、同じことをゆっくりと手で表現しているが、一向に分からない。
そんな僕の様子を感じたのか、一つ大きなため息をついた。
そして手招きをして空き教室に入った。
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