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彼女は教室に向かうとすぐさま黒板に向かった。
そしてチョークを持って何かを書いた。
『私は生まれつき話すことが出来ません。 そのせいでたくさんの人から嫌われてきました。 だけど貴方に救われました。 貴方は覚えていないかもしれませんが、小さい頃貴方が私に伝えた言葉が今でも忘れられません。 私は貴方のことが好きです 』
そう黒板に書いて、とある動作をする彼女。
それを見た瞬間、思い出した。
そうか、彼女はあの時の子なんだ。
僕はあの日のことを思い返した。
僕は一人で公園で遊んでいると、泣いている女の子が来た。
「どうして泣いてるの? 」
彼女は指で地面に文字を書いた。
『私ね、耳は聞こえるんだけど、生まれつき話せなくて変だって。 普通じゃないって笑われたの………』
「何で? 僕のおばあちゃんも話せないよ。 話せないだけで普通だよ」
彼女は驚いたように僕を見る。
僕は彼女に笑って欲しくて話しかける。
「あのね、話せない人の為の言葉っていうのがあってね、僕も練習しているんだ。 」
彼女は興味津々に僕の話を聞いている。
「手でこうやると、『貴方のことが好きです』ってなるんだ。 僕はこれしか出来ないけど………」
そう言って手で表現して教える。
彼女も真似して一緒にやる。
彼女がマスターする頃にはもう既に夕方になっていた。
バイバイと手を振って別れる。
そのあと両親の転勤の都合で僕が引っ越しちゃって会えなくなったんだっけ?
『貴方のことが好きです』
唯一できる手話で彼女に僕の気持ちを伝える。
彼女は僕の前で初めて満面の笑みで笑ってくれた。
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