繋いだ手

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繋いだ手

 俺には特殊な能力がある。それは、手を握った相手の死期が判るというものだ。  幼稚園の時、友達とお遊戯で手を繋いだ。その時に何も思わず口にした。 「○○ちゃん、明後日死んじゃうんだ?」  相手が泣き出し、先生に事情を聞かれた。それに俺は、どう説明していいのか判らず、ただ、だって判ったんだもんと告げた。  冗談でも、お友達にそんなことを言ってはダメだと諭されたけれど、実際それは冗談ではなく、二日後、その友達は事故で亡くなった。  そこから気味が悪いと噂が広まり、俺はその幼稚園を退園した。  その時の経験で、なるべくなら人の手など握らないことを決意し、もし握ってしまって相手の死期が判っても、それを決して口にしてはいけないことを理解した。  …あれから十数年。  幸いにも、日本じゃ握手はそこまで頻繁に行うことじゃないから、わざわざ人の手を握る機会はほとんどない。学校行事のダンスや体育の授業などで、どうしても人の手を握らなくちゃならない時もあったけれど、これも幸いなことに、触れた相手達の寿命は長く、死期が判ってもそれを気にすることなくやり過ごすことができた。  でも、人生初の彼女ができた今、俺は俺は悩みに悩んでいた。  好きな子と手を繋ぎたい。それは当然の欲求けど、俺の場合、手を繋いだら彼女の死期が見えてしまうのだ。  デートの時、なんとなく、彼女の方も手を繋ぎたがっている空気を出しているけれど、勇気が出せず、俺は彼女の手を握ることができないままでいた。  でも、最近になってようやく腹をくくることができた。  今まで死期が判った面々のほとんどは、あからさまに天寿を全うしているくらい先のことだったし、仮に彼女の死期が迫っていても、逆に、判ったからこそさりげなく注意を促し、事故やら病気やらを防ぐことができるかもしれない。  そう考えられるようになったから、俺は意を決し、そっと彼女に手を伸ばしたのだ。  ちょとん指が当たる。一瞬彼女の手が強張ったけれど、抗うことなく、ぎゅっと繋ぎにいった俺の手を握り返してくれた。
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