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――明るい――
真っ暗なはずなのに、明るい。そしてほんのりと暖かい。
【"――――"】
「・・・・・・ん?」
今、誰かに呼ばれた?
そんな気がして、目が覚める。
最初に視界に映ったのは青色の空。そして2つの太陽・・・。って、直接見たら眩しい!
まぶた越しからの明るさと暖かさは太陽の仕業かと、そんな事を思って体を起こす。
「ィっッ゛ウ゛!!?」
体を起こした途端、頭を鈍器で殴られたかのような激痛が走った。視界が歪み頭がくらくらする。
「・・・・・ふぅ」
滅茶苦茶痛かったが、幸いに痛みは直ぐに引いた。
あー、良かったと安堵しながら、自分が今立つ場所、周囲を見渡す。
「・・・どこだここ?」
草が生い茂っており木も数本立っている。どこかの平原か、自分以外の生き物の姿と建物は見当たらない。 全く知らない場所だ。
自分が何故こんな場所に居るのか、思い出そうとして――あれ?
何も思い出せない・・・。
いやいや、ちょっと待て。
・・・・・.
――全く、思い出せなかった。
自分が今居る場所だけじゃない。過去の記憶が、何一つ思い出せなかった。
どこに住んでいるか、何をしていたか、今何歳なのか。
「マジか・・・」
自分の名前すら思い出せない。唯一分かるのは、下にアレが付いているので自分の性別が男だという事ぐらいである。
家族が居るか友達が居たかも分からないが、誰の顔も思い出せない。そもそも自分の顔すら分からない状況である。
「っ、いや、マジか・・・」
髪の毛を引っこ抜く。一本だけ抜くつもりが4本くらい髪の毛が抜ける。少し痛かった。
「黒髪・・・」
今自分に分かるのは、自分が男であり黒髪ということ。肌色の肌を持ち、髪がちょっと長いという事だけである。何の解決にもならない。
「だぁ~、くっそ!!」
思い出せない事が無性にむかむかして空に叫ぶ。当然答えは返ってこない。
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