【目覚め】

4/16
前へ
/55ページ
次へ
「・・・・・・」 結構歩いたよな? 歩いても全く誰にも会わないし、建物すら見当たらない。木々が並んだ森しか見えない。 「道を間違えたかな?」と、一瞬だけ思ったが、そもそも何も覚えていなかった。正しい道とか全く知らない。 「頑張ろう」 足を止める訳にもいかないので、それから30分ぐらい歩いた。 そして―。 「あっ!」 人影をやっと見つける。森の方から出て来る彼らの元に、俺は嬉しさのあまり走った。 「すいません!」 声はちゃんと届いたようで、彼らは俺の方を振り返る。 全身緑色の肌。上半身は裸であり、下に布のズボンを履いている。 身長は一メートルと数十センチ。人間より、少なくとも俺よりは小さい。小柄だ。 彼らの手に短剣とか棍棒など、全員武器を持っている。 4人共いかつい顔をしていおり、あまり顔の違いが分からなかった。 「ゴブ、ゴブゴブ」 「あ、・・・はい?」 「ゴブゴブゴブ」 「ご、ごぶごぶ・・・」 折角話し掛けてくれているのに、言葉が分からない。残念ながら俺の知らない言語だった。 くそっ、ようやく人を見つけられたと思ったのに! 「ごぶご・・・、あ、あの! この辺に街とか村とか、何でも良いですけど人が居る所を知らないすか!?」 だからといって簡単に諦める訳にもいかず、俺は必死に身振り手振りで緑肌の彼らに伝えようとするが・・・。 「ゴブブブ!!」 「くっ」 ダメだ。そもそも俺の言葉が伝わっているかもどうか怪しい。 俺が彼らの言葉が分からないように、彼らも俺の言葉が分からなくても不思議じゃないのだ。 「ゴブッ、ゴブゴブ!」 「・・・・・・・・」 ほんと、ゴブゴブしか分からない。ゴブゴブが何なんだ。
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加