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引きこもり四日目。
そろそろ連絡の一つでもきていい頃のはずなのに、一向に反応しない文明の利器。
ベッドに横たわっては起き上がり、横たわり、その繰り返しで時間は過ぎる。
せめて、真里ぐらいは心配の一つでもしてくれると思ったのが甘かった。
決算期ならば、まだ許せる。
「へっ。だーれも気にしてくれないんだー。あたしの代わりぐらい、誰だってできるってことか!」
「驚いた。あの“加賀由宇”が、実は寂しがり屋だったなんて」
「ひぃあっ!」
驚いたのはこっちだ。いつも通りの彼女は、来てやったぞと言わんばかりの表情でこちらを見下ろす。
「スリッパ履いてよ。足音もしないからびっくりするじゃん」
「不用心よ。不審者だったらどうすんの」
「どうしたのー?手土産は何?」
「んー」
冗談のつもりだったあたしの言葉に、真里が返すのは生返事。やがてバッグを漁り始めた彼女は、右手で茶封筒を取り出し枕元に置いた。
「食べ物じゃないの?」
「その太らない体質、変わってくれない?」
横たわったまま封筒に手を伸ばし、封をされていないそこから中身を取り出す。三つ折りにされた一枚の紙切れを前に、理由もわからず震える手。
「シュークリームとそれ、どっちが良かったのかな」
「…九月一日をもって…広島…」
「…由宇がいないと、寂しいけどね」
こうなることを、あたしはきっとどこかで望んでいた。
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