第1章

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   計量と検診を無事にクリアした康平は、他の部員達と軽い食事を採った後に休息した。その時彼は、今日の対戦相手のイメージをしていた。  相手は立花高校三年生、吉川徹(よしかわとおる)である。康平と同じオーソドックススタイル(右構え)で、膝を使って早いテンポのリズムを取り、中間距離から思い切り右ストレートを打ってくるタイプだ。立花高校には、この手のタイプが多い。  二人は去年の新人戦で一度対戦している。第二ラウンド中盤、相手の右ストレートをかわしながら放った康平の左ボディーブローで吉川は倒れた。  無意識に打ったパンチで、康平は左拳にあまり感触を感じていなかった。だが、吉川が息を吐き切ったタイミングでパンチがヒットしたようで、彼は背中を丸めたままキャンパスに横たわった。レフリーはテンカウントまで数え、康平のKO(ノックアウト)勝ちとなった。  康平は、吉川をやり易い相手とは思っていなかった。  去年の試合、倒すまでは互角だった。アイツもあれから七ヶ月間、必死になって練習してきた筈だ。彼は、そう自分に言い聞かせながらゆっくりと立ち上がり、軽く身体を動かし始めた。
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