第1章

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   高田康平は(たかだこうへい)、県立永山高校の三年生だ。  他人に言えない恥ずかしい理由で、ボクシング部へ入部した彼だったが、そのまま続ける事になり、とうとう最後のインターハイ県予選を迎えた。  シードされた康平は、昨日の試合を第一ラウンドにTKO(テクニカルノックアウト)勝ちし、準決勝へ駒を進めていた。  一ラウンド目の終わり頃、康平は左フック一発で相手を棒立ちにさせてスタンディングダウンを奪い、その後連打でストップに追い込んだのだ。  試合結果だけを見れば圧勝だったが、本人は不満だったようだ。初戦という事もあって硬くなってしまい、手数の多い相手にラウンド中盤までペースを取られたからだ。  試合会場は県立青葉台高校。親友の坂田裕也(さかたゆうや)のいる学校だ。ちなみに、彼もボクシング部員である。二人は同じ階級(ライトウェルター級=六十四キロ以下)で、共に今日の試合を勝ち進めば、明日の決勝で対戦する事になる。  
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