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「お前は現実が見えているのか!」
雪が舞う日の朝、青年の声がこだまする。
「何が言いたいのだね?」
「亀川さん、あんたは何一つ、動こうとしていない。俺にはわかる。
会議に出ればあてもなく方言を繰り返し、いたずらに会議を乱し、無為に先延ばしを繰り返し!それでは何も生まれない!生まれるべきものも生まれない!そのこともわからないのか!」
「心外だな、お前たちには何もわからないだろうに」
「わからないんだったらここには来ない。見ろよ!」
その青年、夜来 笙(やらい しょう)はショルダーバッグから書類を取り出し、亀川 譲治(かめがわ じょうじ)という政治家に突き付けた。
彼こそが夜来が目の敵にしている政治家だ。
その書類には近い年の経費の動き、それに譲治をどこかのゴルフコース近辺で目撃した写真が浮かんでいた。
1人がろくでなしなだけで全体のイメージが悪化する、というのは承知の上で、だからこそそのろくでなしを是正しなければならない、そんな思いがあった。
だがそんなことを譲治が知るはずはない。普通は利権を重視したがるものだから。
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