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果たして、譲治は何を言うこともなく、夜来が見せた書類を握りつぶし、まとめて排水溝に叩き込んだ。
もはや彼が何か言うことはなかった。ただ邪魔で、目障りな存在にしかならなかった。
もう目に映らぬようにと、さっさと車に乗り込み、逃げるように走らせた。
(畜生……!)
現実を見た夜来の目は半ば死にかけていた。一種の無力さからか。
「結局……虫けらなのか?地べたにはいつくばって生きる奴らは、みな虫けらなのか?」
「いや、でも……」
夜来の傍らにいた女性……安藤 未来(あんどう みらい)が、彼に話しかける。
「伝わらないなら、伝わるまで、何度でも、話せばいいと思う。途中で投げ出したら、それこそ……終わりだから」
「未来?もう一度、信じろというのか?」
「うん。あなたは、確かに、自分の考えで動いてる。だから」
「自分の考え、か……」
夜来は自分を落ち着かせるように目頭を押さえた。
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