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「それなら、いいんだけど」
「うん。ごめんね」
「いやいや、謝るほどのことではないよ。
それよりも、考えようか。これから、どうするのか……」
夜来が廊下を歩く声は、しだいに煙のように細かく、尾を引いていった。
しばらくして。
「えーと、最近我々がデモに行ったのは記憶に新しいと思う」
「それで今回もうまくけむに巻かれましたよね、先輩」
夜来を「先輩」と呼ぶのは、この大学の1年生、泊 泰道(とまり やすみち)。
夜来とは未来以上に古くからの友人で、ゆえにこの集団の中では年下のほうではあるが、夜来と直接相談する機会も多い。
「うん。それも初めてとかじゃなくて、何度も、何度も。もう一年になるのか……」
「そういえば僕が大学に入ったころにはもうやってましたね。それで僕も何か力になりたいと思いまして」
「恩に着るよ。君にも、もっとたくさんの、協力してくれてる人々にも」
「そういうの、忘れてはいけませんよね」
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