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「反省したんです。だって俺、美鳥さんに嫌われたくない……」
「嫌うも何も……。好きか嫌いかだけで言えば、私は年下は嫌いだと前にも言ったでしょう」
頭に犬の耳でもあればさぞかし力なく伏せられているのだろう。優駿の挙動はそんな光景を彷彿とさせる。
「……ホント、めげないコねぇ」
パソコンを操作する傍ら、薫が苦笑混じりに呟いた。
「いいから学校に行きなさい」
「美鳥さんが許してくれたら行きます」
展示機種の在庫表示を確認しながら、サンプルの並びを整えていた宰の手が止まる。
(……だから、許すも何も……)
その無駄にはきはきとした物言いに、宰は閉口し、ただ頭痛がするとばかりに額を押さえた。
「宰」
と、不意に通路側から、聞き覚えのある声がかかる。半ば棚の死角となっていた場所から姿を現したのは柏尾だった。
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