ある春の日のこと。*

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       ぱしゃり、と湯面が何度も波打つ。しがみつくように近場の岩に手をついて、宰は辛うじて意識を保っていた。 「ぃ、あっ……、ちょ、待っ――…!」  制止の声も空しく、後ろから腰を強く引き寄せられて、これ以上ないくらいに繋がりを深くされる。 「宰、さ……、宰さん……っ」 「んぁっ、ぁ、あぁ……っ」  背後から聞こえてくるのは、規則的に響く肌のぶつかる音と、忙しない呼吸音、そしてうわ言のように繰り返される自分の名前。揺さぶられるままに漏れる声は、もはや自分のものではないようだった。 「かわいい声……もっと聞きたいです」 「ぃ……っ、ぁあっ……!」  焦らすようにゆっくりと腰を引かれ、掻き分けるようにして奥へと戻される。と同時に、身体を支えるように脇腹に触れていた手が、隙をつくように胸の突起を爪弾いてきた。すでに痛いくらいに充血したそれを、幾度となく埋めるように押し潰されては引っ張られ、そのたびに宰はびくびくと上体を跳ねさせる。 「気持ちいい、ですか……? 腰、動いて――」 「うるさっ……、や……っぁ、んん……っ」  胸に疼痛を覚えながらも、艶かしく腰が揺れていた。指摘されると、咄嗟に身体に力が入り、そのつもりもなく内壁が優駿を締め付ける。
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