ある春の日のこと。*

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「あ、宰さ…っ……」  優駿は堪えるように目を眇め、背中から羽交い締めにするよう宰の身体を抱き締めた。そして一気に抽挿するペースを上げる。 「あぁっ! あ……っも、やめ……っ」  苦しいほどの性感が全身を駆け抜けていく。  ぐちゅぐちゅとあられもない音を響かせながら、過ぎるほど熟れた粘膜を掻き乱される。執拗に擦られ、穿たれる場所から、半ば強制的に高みへと追いやられていく。  もう無理だ。これ以上は付き合いきれない。いますぐ解放して欲しい。  そう思うのは嘘じゃないのに、身体はまるで正反対な反応を返すから堪らない。 (もう……おかしくなる……)  明滅する意識の中で、蕩けるような甘い疼きが全身に広がっていく。既に達した回数などすっかり分からなくなっているくらいなのに、張り詰めた屹立からはしつこく雫が溢れ、優駿へと絡みつく襞はいっそう強請るように収斂を繰り返していた。 「つ……、宰さんの中…すごく、熱い……、あの、俺…もうっ……」 「ん……っい、いいっ……いいからっ、とっとと、いっ……ぁ、っ…――!」  その言葉を聞いてか聞かずか、優駿は急くように宰の腰を抱え込み、突き入れるようにして最奥を貫いた。宰の口から、声にならない悲鳴が上がった。  接合部をより密着させるよう腰を押しつけられると、間もなく優駿の下肢が強張ったのがわかった。かと思うと、身の内を焦がすような熱が叩きつけられる。断続的なそれに、宰の背筋が伸び上がるように撓り、固く閉じた瞼の下から、生理的な涙がぽろぽろとこぼれて落ちた。  空気を求めるみたいに唇が戦慄き、――気がつけば宰も飛沫を散らしていた。
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