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そもそも、チーフとは言え柏尾のメイン担当部署はパソコン関係だ。位置的にも宰や薫のいる携帯コーナーからはそれなりに離れているし、いつも忙しくしている柏尾にとって、それぞれの売り場に直接出向くことはそう多くない。
それでもこうしてふらりと姿を見せるのは、恐らく諸々の抜き打ちチェック――の為なのだろうが、その実、性質の悪い悪戯をして面白がっているだけではないかと宰は思っている。
「いや、なんか急に静かになったから気になってね」
現に今だって柏尾は取ってつけたような笑みを消さない。
「ああ、二人してちょっと苛めちゃいましたから。ね、美鳥君?」
「苛めちゃったって……」
名を呼ばれ、宰は柏尾から薫へと視線を移す。だがそれもすぐに瞬きに乗じて逸らすように伏せた。次いで淡々と答える。
「別に、俺は本音を言ったまでですよ」
「美鳥はいつもクールだねぇ」
柏尾が揶揄めかして僅かに肩を竦める。
「まぁもともと美鳥君、年下嫌いだって言ってましたしね」
薫も同感だとばかりに苦笑した。
そんな二人の態度に、宰は「もういい」とばかりに嘆息する。そして強引にでも話を終わらせるための言葉を探す。
「……どっちにしても、今日は珍しくへこんでいたようですから、さすがに明日は来ないでしょう。その方が店にとっても――」
しかし、それも半ばで阻まれる。柏尾と薫が、声を揃えてかぶせたのだ。
「それはないでしょ」
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