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しかし、何はともあれ、彼女がレザーネックレスをいじった瞬間、抱いてしまった性が許せなかった。
可愛らしいお手手で……。俺のっネックレスをっ!!
ああっクッソ! いかん、そっちに妄想を持って行ってはイカン。
部屋中をうろうろし、持ってただけのエロ本をかき集めだす。
こういう時はこの溜まった俺の中の劣情を吐き出すに限る。
だが、どれもこれもエセ清純派な女にしか見えない。
あんだけこんな清純な子がこんなイケナイ事を! と萌えていたのに。
やっぱり生粋の清純な子には叶わないのだ。
「こんなエセ清純派女なんかで抜けるかーー!」
俺は行き場のないこの胸のもやもやと体のイケナイ反応にうおー! と雄叫びをあげながら外へ飛び出した。
アパートの階段をチーターの如く駆け下り、夜の住宅街を走り抜け、国道沿いを言葉にならない大声で流星の如く叫び走り出す。
こういう時無駄に鍛えてしまった自分の脚を恨む。
自分でも不可解な行動だが、もはや走りまくり、走り抜け、体がクタクタになるまで、エネルギーが尽きるまで走り続けるしかなかった。
気づくと2駅くらい走り抜けていた。
はぁはぁ……。何やってんだ俺……。
やっと体の中の暴れていた虫が収まり、くたびれて公園のベンチでへたり込む。
翌日、講義室の部屋から、窓の外を何気なく見ると、春香の姿が見えた。
次の授業はお互い違う講義なので、春香は別の教室へ移動しているようだ。
ふと渡り廊下で知り合いらしき女性が春香に話しかけ、彼女が振り返る様子が見えた。
その女性は片手に丸い大きな筒を抱え、デザイン科の連中がよく持っている課題を入れる黒いケースを抱えていた。
……デザイン科の友達かな? また同じアトリエとか?
俺は立ちすくんでいる春香の姿を見て、何気なく傍にあったスケッチブックを手に取り、デッサンを始めた。
彼女の俯き加減の絵、横顔の絵、立ち姿。
ラフデッサンだが、とにかく描かないではいられない。
少しでもその姿形を収めたい。
凹凸の少しだけある紙はさらさらと2Bの鉛筆を受け止めて、何もなかった画面を彼女で一杯にさせてくれた。
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