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「あのー」
また、女子に後ろから呼び止められた。
ノートは重いし今日は厄日か?
「だから、女には…」
「靴紐」
……へ?
振り返ると、さっきと違う女子。
間違えた、恥ずかしー。
「靴紐ほどけてるよ」
って言われても、両手にノートだし。
え?
ええ?
誰が結んでくれって頼んだ?
足元で、しゃがみ込んで俺のスニーカーの紐を結ぶ、
その後、
しゃがみ込んだまま、俺を見上げる女子。
小動物みたいで……不覚だ、
小動物が足元に寄って来たみたいで、可愛い。
話したこともないのに、信じられないけど、
ノートで塞がった両手がウズウズする。
『あ、頭、撫でてみたいっ!』
顔の温度が二度ほど上がる。
極めて不覚だ。
「何?」
小首を傾げて俺を見上げる。
短い髪が、サワサワと揺れる。
少し茶色がかった髪。
小動物度がアップする。
『益々、撫でてみたいっ!』
「あのね…」
は、はい、何でしょう、小動物さん。
そろそろ立ち上がって、人間に戻っていただけないでしょうか?
そうしないと、ノートを置いて、撫でてしまいそうです。
「人に何かしてもらったらお礼を言うって、お母さんから教わらなかった?」
呆れた顔で説教しながら、小動物が立ち上がる。
立ち上がっても、ちっせぇー。
「あ、ありがとうございます」
「人に言われてからじゃあ、遅いよ。
今度から気をつけたほうが良いよ」
立ってもやっぱり小動物さんは、少し不機嫌そうに言うと、去って行った。
「あー、ノート重てぇ」
今日のところは、重たいノートに感謝、かな。
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