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「――で。なんで離婚したの?」
予想通りの質問があまりにも直球で来たものだから、私は思わず吹き出した。
灰皿の灰がちょっとだけ舞って焼き鳥の皿の端に着地。
気にもせずに焼き鳥ひとくち、それからビール。
「面接で根掘り葉掘り聞いてくる会社もあったんですよ。バツ一個付いただけで人格否定されるのかーって落ち込みました。大した理由じゃないけど、もう話すのも面倒臭い」
ちゃんと笑って言えただろうか。
いずれは聞かれるんだろうとは思ってた。
もう赤の他人でもない木嶋さんからだから、別に聞かれたこと自体が不快なわけではないのだ。
ただやっぱりまだ、ソレを誰かに話すことで一番辛かった時を振り返るのは怖かった。
この人の前で暗くなるのも嫌だ。
応募書類の経歴を見れば私にバツが付いてるのは明らかだ。
結婚期間中の扶養の範囲内のパート事務職やら、離職期間までバレちゃうのだから。
差し支えなければ、を枕詞に、面接でやんわりと離婚の経緯を探ってくる会社がほとんどだった。
大抵の面接では少し濁しただけで引き下がってくれたけど、一社だけやたらと掘り下げてきた会社がある。
二次面接で面接官が変わると、まだ新しい傷口を抉るみたいにもう一度ゼロから説明させられた。
口先では心中慮るようなことを言ってくるのが余計に不快だった。
一次、二次、社長面接。
今の会社だけは、そう言えば一度もそのことについて質問してこなかった。
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