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「あー……向こうからなの」
今の答えからどう判断したのか、木嶋さんはそう言った。
こっちから切り出したんじゃなく、向こうから。
その通りだ。
「引き下がらないとは」
「まーねー、興味あるじゃん」
沈黙。
ビール。
煙草。
焼き鳥。
ビール。
空いたジョッキをカウンターに置いて、木嶋さんは焼酎を注文した。
同じペースでジョッキを空ける。
私はここから生グレサワーでついていこう。
ロックは飲めないわけじゃないけど、実は匂いが苦手。
「木嶋さんは」
木嶋さんのペースに合わせてたから、私も結構飲んでたと思う。
しばらくお酒から離れた生活していたから、少し弱くなっている気もする。
つまり、酔っ払ってたんだと思う。
「木嶋さんも、お仲間ですよね」
ちょっと前まで隣県から片道二時間半かけて通勤していたらしい彼は、今は会社から三十分のアパートに一人暮らししているらしい。
地元に帰れば誰も住んでない家がある、らしい。
入社してすぐに聞いた気がする。
本人が言ったのか、他の誰かから聞いたのかももう忘れたけど。
つまりその『誰も住んでない家』に、昔は『誰かと』住んでいたんでしょう。
この人も仲間だ、と、かなり早い段階で私はそう認識していた。
そういう結論を導き出した経緯はすっ飛ばして勝手にお仲間扱いした私に、木嶋さんは少しだけ目を開いた。
――同志。
あーそっか。
その言葉は、私たちにはやけにしっくり来る。
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