イチ。

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面接はいきなり仕事内容の説明から入った。 転職エージェントから紹介を受けた受付事務ではなく、本社勤務の仕事だった。 希望していたバックオフィスだ。 こっちの職歴や志望動機など全く聞かれないその面接は、まるで会社が人を選ぶためではなく、私に会社を選ばせるために設けられた場のようだった。 今にも死にそうなくらい疲れた顔をしたオッサンが、必死に訴えかけてきた。 応募はショールームの方でしたが、現場にいたいのですか。 こういう裏方の事務をして欲しいのですが、接客の方がやりたいですか。 現場の方が経験は活かせるのかもしれない、でも業界の知識がある方に裏方に来てほしいんです。 勤務地が応募していたショールームよりもご自宅から離れますが、通勤は可能ですか。 本社の方が給料は良いし、ショールームにいられるのは四十代前半くらいまでがぎりぎりでしょう。 もちろんショールームから入ってその後異動という道もありますが…… 半分上の空で彼の説明を聞きながら私は違うことを考えていた。 ――この人、放っておいたら近い内に過労死しそう。 面接中にも関わらず、彼の携帯――ふた昔くらい前のPHSのようだった――は五分と間を置かずにけたたましく鳴った。 三回目の着信で私はようやく、それがプライベート用ではなく仕事用の回線なのだと気が付いた。 彼は忌々しそうに携帯を一瞥するだけで、面接で与えられている彼の役目を果たすまで一度も、決して電話に出ようとはしなかった。
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