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「こんな時に優しいのは狡いなー」
ひとしきり泣いたら、ちょっとお酒が抜けた。
急速に恥ずかしくなってきて急いで追加注文を入れると、木嶋さんはまだ飲むのかと若干引きつり笑いを見せる。
「お前が急に弱音吐くからだろーが」
「弱ってないし、別に」
「あーそーかよ」
呆れたように笑いながら、木嶋さんも焼酎のお代わりを入れる。
仕切り直しだ。
そう言えばあんまり食事に手を付けないまま飲んじゃったんだ。
少し食べよう、と、追加のつまみも二人で一緒に選ぶ。
選びながら、お皿の上で冷め切ってしまった焼き鳥をかじる。
冷たい、固い、と小声で文句を言うと、横から木嶋さんが手を伸ばし、私の手から串ごとさらっていった。
「あーちょっと!」
「これもう一本ね」
文句を言いかける私に被せるようにして、カウンターの向こうに声をかける。
やった、焼き立て熱々食べれる。
ころっと気を良くした私の表情の変化を見ていたのか、木嶋さんはどや顔を見せてから冷め切った焼き鳥を食べた。
「あー間接キスだ。赤ちゃんできちゃう」
「おー、って馬鹿か」
「うちの会社の常識なんでしょー」
「みんな子だくさんだな」
――『子どもは?』
初めてサシ飲みした時に、そう言えば聞かれたな。
うちは出来なかったけど。
木嶋さんとこは、どうだったんだろう。
もしかしてパパだから、年下の扱いが上手いのかな。
泣いた子をあやすの、得意なのかな。
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