ヨン。

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「ちょっと、なんでここで金子さんですか」 「お前の知らないとこで騒いでる奴らがいんだよ。あの、俺が行かなかった忘年会ん時」 あー、あの日。 確かに金子さんとは、結構長くしゃべってたけど。 「金子とお前こっそり手ぇ繋いでたって」 「ぶっ!」 あー……あー、あれか。 手、ね。 確かに触れてた、気はしてた。 でも、決して繋いではいなかったと思うんだけど。 「お前、酔っ払ってあいつにも淋しいとか泣きついたんじゃねえの? 金子だって面接したんだから、お前の過去も知ってるわけだし」 「ちょ、まさか! いくら酔っ払ってたって素を曝す相手は選びますっ! なんで金子さんになんかっ」 やば、ぽろっと失礼なこと言っちゃった。 金子さん『なんか』って。 でも仕方ない。 上手く付き合っていかなきゃとは思っているけど、あの人なんだかんだで私も気に喰わないんだもん。 なんだかんだって言うか、木嶋さんのことを理不尽に無能扱いされたからだけど。 「お前……」 「へ?」 「酒抜けたわけじゃねーの? まだ酔ってる?」 「は、まあ、普通に酔ってはいますが。さっきのような失態はもう……って、どーしたんですか木嶋さん」 そんなポカンとした阿呆面して。 とは、さすがに口に出来ない。 「いや、そーか。相手選んで俺か、と思って」 「あら。うっかり告白しちゃった」 「なんつーか、不憫だなお前」 「うわ、あっさり失恋」 馬鹿か、と木嶋さんは笑い飛ばした。 笑い話で済んで良かった。 そーか選んで木嶋さんだったのか、と、言われてから気付いてしまった自分は、あんまり笑えない。
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