185人が本棚に入れています
本棚に追加
「ちょっと、なんでここで金子さんですか」
「お前の知らないとこで騒いでる奴らがいんだよ。あの、俺が行かなかった忘年会ん時」
あー、あの日。
確かに金子さんとは、結構長くしゃべってたけど。
「金子とお前こっそり手ぇ繋いでたって」
「ぶっ!」
あー……あー、あれか。
手、ね。
確かに触れてた、気はしてた。
でも、決して繋いではいなかったと思うんだけど。
「お前、酔っ払ってあいつにも淋しいとか泣きついたんじゃねえの? 金子だって面接したんだから、お前の過去も知ってるわけだし」
「ちょ、まさか! いくら酔っ払ってたって素を曝す相手は選びますっ! なんで金子さんになんかっ」
やば、ぽろっと失礼なこと言っちゃった。
金子さん『なんか』って。
でも仕方ない。
上手く付き合っていかなきゃとは思っているけど、あの人なんだかんだで私も気に喰わないんだもん。
なんだかんだって言うか、木嶋さんのことを理不尽に無能扱いされたからだけど。
「お前……」
「へ?」
「酒抜けたわけじゃねーの? まだ酔ってる?」
「は、まあ、普通に酔ってはいますが。さっきのような失態はもう……って、どーしたんですか木嶋さん」
そんなポカンとした阿呆面して。
とは、さすがに口に出来ない。
「いや、そーか。相手選んで俺か、と思って」
「あら。うっかり告白しちゃった」
「なんつーか、不憫だなお前」
「うわ、あっさり失恋」
馬鹿か、と木嶋さんは笑い飛ばした。
笑い話で済んで良かった。
そーか選んで木嶋さんだったのか、と、言われてから気付いてしまった自分は、あんまり笑えない。
最初のコメントを投稿しよう!