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ごじゅうよんって。
四十三、なんですけど。
「……あれ。今、自分の歳で計算しました?」
「お前、いーからもっかい酔えよ」
「あの、木嶋さん」
「うるせーな。八十までは大丈夫だ」
「何が大丈夫なんですか」
「別に、もう焦る歳じゃねえって話」
仰ってる意味が、よく。
分かんない、ような。
分かってないことにしたい、だけのような。
「あの」
「あ? なんだよ」
「ご結婚されたのは、いつ」
「は? 今それかよ。八年前だ八年前!」
八年前に結婚して?
四年で別れて?
四年かかって、次の恋。
……って、まさに今、なんですけど。
「あれ、酔ってんのかな。計算がなんか」
「おー、酔え酔え。酔って泣いて寝て起きて全部忘れろ」
「あれ、なんか冷たい」
「湯たんぽ代わりが欲しいか」
「えっとそれは、なんか鬼畜、らしいので」
それは、狡いでしょ。
そっちも狡いけど、私も相当狡い。
「要るのか、要らないのか」
「それ、私が決めるんですか」
無理ですよ。
だってきっと、まっさらになるまでには八年かかる。
今なんてまだ全然冷静じゃなくて。
だからきっと、色々判断を間違う。
これは恋じゃあるまいな、から始まって。
やっぱり恋なのかもしれない、とも思うけど。
自分が新しい恋をしたいのかどうかさえ分からない。
そんな曖昧な気持ちで、今この人に甘えるのは。
――ましてや、仕事のパートナーなのに。
変に関係壊したりして、半端な仕事だけはしたくないのに。
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