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冬だから。
寒いから。
淋しいから。
弱ってるから。
酔ってるから。
ただ温もりを分け合うだけなのに、沢山沢山言い訳を重ねなければいけなかった。
木嶋さんは私の代わりにそれを口にした。
そうすることで、自分だけが狡くなろうとしていた。
狡い私などなかったことに、しようとしてくれていた。
風の強い、本当に寒い日だった。
木嶋さんの腕の中は温かかった。
すぐ隣に感じる体温と、心臓の音と、呼吸。
アルコールのまわっていた私は、その安心感に包まれるとすぐに眠りに落ちた。
夜中に二度目が覚めた。
一度目は木嶋さんも起きていて、またすぐに寝付かせようとしているみたいに、そっと頭を撫でてくれた。
二度目に目が覚めた時、自分が泣いていたことを知った。
顔に触れたままの木嶋さんの親指には、彼が拭ってくれた私の涙の痕跡が残っていた。
泣いた理由は一体何だったんだろう。
別に後悔はしてない、つもりなのだけど。
木嶋さんは、どう思っただろうか。
この優しい人を、傷付けていなければいいのだけれど。
そっと手を握ってみた。
寝ているはずの彼の手に、少しだけ力がこもった気がした。
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