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採用されたら直属の上長になるのであろうそのオッサンは、私にやらせたい仕事内容の一通りの説明と彼がどれだけ私を必要としているかのアピールを終えると、鳴りやまない電話に急かされるように一旦退室した。
残った爽やかなイケメンが、場を仕切り直すかのように会社全体の説明を始めた。
応募書類に書いた経歴と一次面接だけで、もしかしたら既に採ることは決まっていたのかもしれない。
そう思ってしまうくらいに、このイケメンは都合の良い事ばかりを述べた。
うちの会社に入ればこんな良いことがあなたを待っていますよ。
是非来てください、一緒に働きましょう。
それまでいくつの会社を受けても箸にも棒にもかからなかった私は、『是非』と言われて悪い気はしなかった。
けれどこのイケメンは気付いていないのだろうか、さっきのオッサンの話と微妙に食い違う会社説明に。
笑顔を絶やさずにイケメンの話を聞き相槌を打ちながら、腹の底で冷静に分析した。
ひとつ、会社がただただ人手不足だから、甘いことを言って騙してでもとりあえず人を入れようという魂胆。
ひとつ、会社もしくはその部署の実情を、実はこのイケメンが良く知らないだけ。
過労死しかけたオッサンを見れば、人手不足は明らかだった。
だから別に会社にとっては私じゃなくても良いのかもしれない。
たまたま経験者だから都合は良かったんだろうけど。
でも私は最終的に、後者だと結論付けた。
このイケメンは、さっきのオッサンほどには会社や仕事を理解していない。
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