異世界のトーテムポールに転生してしまった俺の話

2/6
前へ
/6ページ
次へ
あの時を思い返すと、今でも激しい後悔の念に苛まれる。 「異世界で人生をやり直してみないかい?」 本当に短慮だったとしかいいようがない。どっちかって言うと、今すぐ人生をやり直したい。 なぜこの質問に、俺はイエスと答えてしまったんだろう‥‥。 転生というものをご存知だろうか? マンガやゲーム、小説などでお馴染みのアレだ。ごく平凡な高校生やら社会人やらがトラックに轢かれて死んだとおもったらそれは神様の手違いで、お詫びにチートな能力をプレゼントされて剣と魔法の世界に転生させられる、というよくある設定のひとつだ。王道的展開だ。 まぁ、主人公がトラックに轢かれすぎだと思うし、神様も手違いを頻繁しすぎだと思わないでもないし、そもそもそんな体験をしちゃってる時点で主人公は平凡ではないという気がしないでもないが‥‥。 それはさておき。なぜ俺がこんな話をはじめたのかと言うと、これには深い理由がある。 「ウッホッホ! ウッホッホ!」 「ンババンバッバ!」 今俺の目の前には、腰簑一枚の姿で踊り狂っている野郎どもがいる。髪はボサボサ、肌は垢まみれ、全身すりきずや打ち身だらけでまともに治療もしていない。おまけに何日も風呂に入っていないのか、かなりスパイシーな匂いがする。そんな寄ると触ると色んな意味で危険なやつらが、レッツダンシングしやがっている。 なによこれ。どういう状況よ、これ? 混乱した俺はとりあえず、ダンスメンバーの一人に声をかけた。──いや、かけようとした。 「──」 そこで声が出ない事に気づく。 いいや、声だけじゃない。体が動かない。指一本動かせない。 なんだこれ‥‥‥。 そこでようやく異変に気づいた。ゆっくりと目線を下げて、自分の体を見下ろしてみる。 まず俺の視界に飛び込んで来たのは、極彩色に色付けされた垂直の体だった。 『‥‥‥』 大丈夫だ、問題ない。ちょっと表面に般若とか仁王様もかくやというアレな彫刻が施されているが、 前衛的なデザインの木製の鎧に見えなくもない。鎧‥‥うん、鎧だ、鎧。 そこからさらに視線を転じて、両肩を見た。正確には、腕の付け根に目を向けた。 『‥‥‥‥』 あっれぇええ~?おっかしぃなぁあ~~?! なんか、腕がなくなってるようにみえるんだけど、気のせい?気のせいだよね? ニンゲンって、腕が根元からごっそりなくなっても大丈夫だったっけ?そんなはずないよね?
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加