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ってことはアレだ!俺の両腕はこのセンスゼロな鎧の中に収納されてるんだ!きっとそうに違いない!
無理やり自分を納得させて、足元に目を落とした。
そこで俺は、地面から生えている極彩色の体を目撃する。
『‥‥‥‥‥‥』
オーケー、把握した。だいたい判った。よし、落ち着こうか、俺。
落ち着いて、まずは状況を整理するんだ。決して取り乱してはならない。
とりあえず、今の俺の体は垂直だ。手も足もない、完全なる円柱である。しかも表面には、ひとめ見ただけで呪われそうな前衛的すぎる彫刻が施されている。材質は不明だが、木製の棒になっていた。いいや、直径が四~五十センチくらいはありそうだから、丸太といったところだろうか。
そんな前衛的な丸太の俺は、地面に垂直に突き立っていた。聳え建っていた。だって足?が埋まってるんだもの。
そして身動きも抵抗も出来ない、正に手も足も出ない俺の周りでは、奇声を発しながら踊り狂っている原始人っぽい野郎どもがいる。
うん、俺、今トーテムポールになってるよね?
『なんじゃこりやぁあああああ~~~?!!』
なんなのよ、これ?!ふつう異世界転生って言ったら人間なのが基本だろう?!
もしくは竜人とか獣人とか、ちょっと珍しいところでヴァンパイアとか精霊だろうが?!それもこれも人型であることが大前提だ!
それに世界観おかしいよ?!
なんで原始人なの?!なんでワンクッションも挟まずいきなり第一から第二十異世界人と接触した挙げ句、それが「死んでしまうとは情けない!」って頑張ってる勇者に対して直球でディスッてくる国王様とかじゃなくて原始人なわけ?!
「ウッホッホ!」
「アウッ!オウッ!」
っていうか、やかましいわ!いつまで踊ってんだよ?!そしてさっきから何やってるの?なに果物とかブタっぽい生き物とかを供えちゃってるの?なんかの儀式?
なんなの、これ?どういう状況?誰か説明して?!そしていい加減、踊るのをヤメテ?!なにげにスゲェ体力だな?!かれこれ二時間近くは踊ってるぞ?!
俺はあらんかぎりの声をふり絞って、全力でまくしたてた。だがその全力はひとつも音にはならなかった。当然だわな。今の俺には声帯がないんだもの。
『‥‥どうしてこうなった?』
遠い目でダンス集団を眺めやる。そしてこうなる前の出来事に思いを馳せた。
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