異世界のトーテムポールに転生してしまった俺の話

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「ちょっ‥‥待っ──ぐすっ!」 そこでようやく異変に気づく。 「待ってよぉう‥‥ひっく!」 なんかおかしい事に気がついた。 「なんで逃げるんだよぉう‥‥ハァハァ‥‥ひぃぃっく!」 もしかして泣いてない? イケメン、泣いてない? 嗚咽だか喘鳴だかよく分からないものが、よたよたと近づいて来る。俺は恐る恐る背後を振り返った。 「お願いだから話を聞いてよぉう‥‥ふぅふぅ‥‥ぐすっ!」 泣いてはる。 めっちゃ号泣してはりますわ、奥さん。 へなへなと両足から力が抜けて行った。 なんなの、このイケメン?俺になんの用?そこまでして追いかけて来て、一体なにを言いたいわけ? ここで俺は、ようやくこいつの話を聞く気になった。これ以上無視する事は出来なかったからだ。だってなんか、俺がいじめてるみたいなんだもん。 まぁ、そのおかげで冒頭の「異世界で人生をやり直してみないかい?」な提案をされるに至ったわけだが‥‥。 イケメンが言うには、俺はこのあと事故に遭って死ぬ運命にあるらしい。ほんで別の世界の神的な存在であるイケメンが、実験を兼ねてその世界に俺を転生させてみたいのだとか。 「僕の世界は生まれてもう二千年近く経つんだけど、あんまり文明が発達してないんだよね」 自販機でドリンクを買い、俺はあらゆる意味で神メンだった男とともに、近くにあった廃ビルの玄関口に腰を下ろす。ちなみに俺はホットコーヒーで、神メンはロイヤルなミルクティーだ。さらに言うなら俺の奢りである。 「だから高度な文明をもつ世界の人間を招いて、僕の世界の住人と接触させれば良い刺激になるんじゃないかと思ってさ」 神メンは意味がないのにステンレス缶の小さな飲み口にふうふうと息を吹きかけている。ゆっくりとミルクティーを飲んで、案の定「あちっ!」と小さく悲鳴を上げた。 「なるほど、話は分かった」 俺は神妙な面持ちでひとつ頷く。神メンが、どこか抜けてる事もよく分かった。 「じゃあ、引き受けてくれるの?」 しかしぱあっと顔を輝かせた神メンに、俺は即座にびしりと指を突きつけた。 「ただし条件がある」 そう、なにもなしで地球よりも文明度が劣る世界に転生させられるなんてまっぴらだ。それにこの条件付けは、ある意味通過儀礼でもある。お約束展開ってやつだ。 「チートをつけてくれ」 異世界転生といえば、やっぱりこれだよね。
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