祖国の守り手、司令官の帰還

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 悠子が真剣に言っていることをこれまでの事実からようやく理解した。死人との約束を守る為に自衛隊と対峙したのは耳にしている、外見と立場に惑わされていたが、彼女はずっと本気だったと。 「……解放すればクァトロは敵を退ける為に戦うのかね」 「無論、あの人がそう望む限り!」  武田首相が目を閉じて考える。意地になっても得るものは何も無い、ここでうんと言えば少なくとも五万の兵力、それも統率された歴戦兵を得られる。 「連合軍を自衛隊の指揮下に入れるのが条件だ」 「断る!」 「では、首相直下の指揮下に!」  即答されギリギリの譲歩を申し出る、だが。 「クァトロの佐々木悠子は、島中将以外の指揮下には絶対に入らぬ! それが一国の最高指導者であろうとも!」  瀬戸際の交渉にも一切乗らずに悠子は前へ出る、首相は進むことが出来ずに一方的に退がるしかない。全ての状況が不利だと示している。 「では解放した島中将が認めれば、クァトロは日本政府の指揮に従うかね?」 「あの人がそう命じれば、皆従う」  じっと瞳を覗き込んで視線を外さない、耐え切れずに首相が目を逸らしてしまった。 「……解った。島中将を解放する」 「承知した。私が迎えに行く。斉藤政治委員長、後は任せる」  話の途中であったが全てを放り出して部屋を出る、将軍等も着いていってしまった。 「ま、そういうわけだ。細かいことは私達で話をしよう」  年寄りの役回りだろう、お互いに。何かを悟ったかのような表情で武田首相へと語りかける斉藤だった。
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